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部室の前にびしょ濡れでうずくまってるヤツがいた。



「ねえ、阿部、」

「何してんの?」

「部室の鍵持ってる?傘持ってる?ロッカーに体操服入ってない?」

「…あるけど」

「私ってば、ラッキー!」





状況を簡単に説明すると、今日は台風が近付いて来たから午前中授業になった。 もちろん俺もすぐ帰るつもりだったが、明日からの自主トレの確認に花井が行っ たため、俺が部室の施錠確認をさせられることになり、一様鍵持って来たら部室 の前にこいつがいた。
傘を忘れたらしい。校門を出てすぐ土砂降りになり、仕方なく部室前の小さ な屋根の下で雨宿りをしていたらしい。台風が来そうだと何日も前から分かって たし、今日の午後からの降水確率は90%なのに、傘を持って来ないなんて非常識 にも程があるだろ。こいつ、絶対三橋以上にバカだ。
まあ、俺はそんなヤツのために体操服を探してる。俺の体操服がなかったか ら、他のヤツのロッカーまで探すはめになった。不可抗力だ。たとえこれで没収 されるような物が見つかっても仕方がない。不可抗力だ。



「…っくしゅん。っくしゅ」



くしゃみひどいな。風邪か?仕方ない、上着くらい貸してや…



「ん?どしたの?」

「ばっ、お前、なんで服脱いでんだよ!!!」

「大丈夫、大丈夫。キャミ着てるから」

「大丈夫じゃねえ!!着ろ!!!」

「えー」



…コイツはアホか!!!



「阿部、」



今度は何だ!?



「手、力入んない」

「…は?」

「ボタン止めてくんない?」



…コイツ…。
まあ、ボタンくらいとめてやるか。



がちゃっ



「おい、阿部。何かあっ…」



「…………」

「…………」



「…あ、その、邪魔して悪かったな…シガポにはうまく言っとくから…まあ、な んだ、頑張れよ、阿部…」



ぱたん…



「…………」

「…………」



誰も来るはずのない部室で二人っきり
床には無造作に脱ぎ捨てられた上着
ブラウスのボタンにかけられた俺の手




「…ていうか、何で花井真っ赤だったの?」



…………。



ばんっ



血の気は引いて、でもすぐ頭に血が上って、とにかく部室を飛び出した。
とりあえず死ぬ気で花井を追いかけた。







スーパーボーイ・ラッキーガール



その日阿部の最速タイムが更新されたのは言うまでもない。
07.11.08