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それは たった一言から ほんの小さなことから 始まったんだ 俺は 別に悪意があった訳じゃない ただ その日は無性に苛々していて どうしても放っておいて欲しかったんだ だって此処は俺の家なんだから 自由だっていいだろう? 休みぐらいくれたっていいじゃないか 静かな時間が欲しかった ただ無性に静寂が恋しかったんだ 「私は貴方の家政婦じゃないわ」 そんな事言われて 俺だって黙ってられなかった 今までの俺の苦労 疲れ、憤り、哀しみ、落胆、成功、屈辱・・・ 全てが一塊になって押し寄せてきた気がした いつもの冷静な俺なら 決して踏み切らなかったであろう一線を そのたった一言と苛々が 呆気なく越えさせた 「女はずるいよな、涙なんて流してさ。 でも心の中ではそんな事思っちゃないんだぜ? どうせ、蔑むかなにかしてんだろうよ。 はぁあ、女って奴は!!!」 久しぶりに会った友人が酒を煽りながら そう、零していたっけな あの時はどんな三文ドラマかと思ったけど 一件があった後は妙に納得できる なんとなく 同じ科白を吐いてジョッキでも猪口でもなんでも 音高く酌み交わしたいと思った 悪いとは思っている だが 俺は今でも後悔はしていないつもりだ そんな事のために 此処で躓いている訳にはいかない 立ち止まってなんか居られないから もう一杯酒を煽ったら、 布団に潜ろうか―― |