正しい愛




私と彼と、どちらが間違っているのかなんてどうでもいい。私が知りたいのは、何が本当に正しいのか、ということだけ。そもそもこの行為に正しさを求めること自体、間違ったことなのかもしれないけれど。



「好きだよ」彼の声が甘く響く。「もう、またそんなこと言って。あたしで何人目?」「はは、俺ってそんなに信用ないの?」「彼女持ちの癖によく言うわ。悪い男ね」「じゃあ、そんな悪い男とこんなことしてる君も、悪い女」彼が悪戯っぽく唇に指を這わせた。「ん…ここ、教室よ?」「だから燃えるんでしょ?」ひどく妖艶に微笑んで、唇を重ねる。「…今日は、時間あるの?」「うん。用事あるって言っといたし」「可哀相。自分の男がこんなことしてるなんて知ったら、どうなっちゃうのかしら」「余計なことしないでね、修羅場とか面倒だから」「ふふ、分かってるわよ。でも、彼女には同情するわ」「何で?」「何でって…大好きな彼氏の猿飛佐助が他の女とこんなことばっかりしてるなんて、ショックに決まってるじゃない」「そうかな」「…本当に悪い男ね。彼女のこと…名前、何だったかしら…その可哀相な女の子のこと、本当に好きなの?」彼はゆっくりと口の端を上げた。「俺様、愛してるよ。ちゃんのこと」



その先を見る気も失せて、私は学校を後にした。覗き見なんて悪趣味だとは思うが、向こうのやっていることに比べたら何でもないような気がする。それに私は忘れ物を取りに行っただけだ。教室であんなに堂々と浮気してるほうが悪い。先程の光景がフラッシュバックする。あんなときによくも私の名前を出せるものだ。他の女に口付けた唇で「愛してる」だなんて安っぽすぎて笑えてくる。彼は一体どういうつもりであんなことを言ったのだろう。私が彼のああいう現場を見たのは初めてじゃなかった。その度に、知らない振りをしてきたのだ。嫌われたくないと思ったわけではない。傷付いていないわけでもない。最初のうちは厭で厭でたまらなかった。それでも私は決めたのだ。私は私の愛を貫こう。彼が何をしようとも、私は彼を愛し抜いて、そして絶対赦さない。彼が私を捨てない限り、この気持ちが変わることはないだろう。もっとも、その時が来たらどうなるか分からないけれど。だけど、それまでは。




ちゃん」


私は笑って、あなたの傍にいてみせる。



                          そんなもの、この世界のどこにもない。


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