くしゅん、と小さなくしゃみの声が聞こえた気がした。自分の部屋に向かっていた足をいったん止めて、甲板のほうに進路を変える。そこにいた人影に近付きながら驚かせないように声をかけた。



細い肩を少し揺らして、がおれのほうに振り向いた。どのくらいここにいたのだろう、頬が赤くなっている。

「エース」
「おまえ、今日見張りだっけ?」
「違うけど、こないだ出来なかったから今晩代わってもらったの」

こないだの分もちゃんとやろうと思って、と言っては海に目を戻した。おれはその隣まで歩いていく。近頃は敵襲が多く忙しい毎日を送っていたが、今日の海は正反対に穏やかだ。波の音に耳を澄ませてみると、ざぷん、という小さな波音が聞こえた。

「エースは、何してたの?」

がおれの顔を見上げて聞く。

「ん?ああ、寝ようかと思ってたところだ」
「…じゃあ何でここにいるのよ。さっさと寝たら?」
「まあ、いいじゃねぇか」

にかっと笑うとは変な目でおれを見て、また海に目を戻した。おれはそんなを見つめる。風に髪をなびかせている横顔は、なんというか、きれいだった。ルフィと同い年とは思えないような、色気すら漂っている。女のほうが成長は早いって言うけどほんとだな、とかそんなことを思っていると、がじろりとおれを見返した。

「何?」
「いや…寒くねえ?」
「だいじょう…っくしゅん!」
「おいおい、全然大丈夫じゃねぇじゃん」
「…うるさいな」

おれは苦笑しながらの肩を抱き寄せる。

「、ちょっ」
「うわ、冷て。おまえどんだけここにいたんだよ」

よく見るとは薄い上着1枚しか羽織っていない。この気候にそんな恰好じゃ冷えるはずだ。おれはを自分の腕の中に閉じ込めるように抱き締めた。

「―っ、エース!離してよ!」
「えー…やだ」

はおれの腕から逃れようとするが、おれは更に力を込める。困ったような怒ったような赤い顔で、がおれを見た。

「エース、」
「こうしてるとあったかいだろ?」
「…………」

は何か言いたそうに唇を尖らせていたが、やがてくすりと笑って言った。

「そうだね、あったかい」

エースってやっぱり体温高いんだね、と無邪気に笑うが可愛すぎて、
おれは我慢できずに口付けた。







優しい場所は君の隣に
                          そこはとても居心地がよくて



(「ん…っ!?」「…、その顔反則」)


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