The definition of love





部屋の中には、分厚い本が窮屈に並んでいる。そして、机の上にも様々な言語の本が乱雑に積み上げられている。お世辞にも綺麗だとは言えないその部屋の奥に、は眉間に皺を寄せて座っていた。

「そんな顔をしていては、折角の美人が台無しですよ?」
「…何しに来たの」

僕が向かいの椅子に腰掛けると、ますます皺が深くなった。

「そうですね、少しお聞きしたいことがありまして」
「何?くだらないことならボスでも千種でもクロームにでも聞いてよ、あたし忙しいから」
「はい、初めて見ましたよ。ちゃんと仕事してたんですね」
「いつもしてるっつの」

そう言って開いていた本を勢いよく閉じる。その拍子に机の隅の一角が揺れた。は気にも掛けない様子で立ち上がる。

「ちょっと、どこに行くんですか」
「だーから仕事だってば。あんたもこんなとこでうろうろしてないでさっさと任務終わらしたらどう?」
「今日の仕事はすべて終わりました」
「…あっそ」

は不服そうに呟いて、溜息をついた。持っていた本を適当に放り投げて、扉の方へ歩き出す。

「僕の話、聞いてくれないんですか?」
「聞く価値のある話?」
「まあ、どうでしょうねえ…僕のほんの些細な疑問なんですが」
「ああ難しいことはなしね。あたしそーゆーのわかんない」
「ボンゴレの頭脳がよく言いますね」
「…あんたそれ次言ったら塩酸飲ますから」

100年に1人の天才と言われているにも関わらず、彼女は自分の能力がもてはやされることを極端に嫌う。天才には変人奇人が多いというが、強ち間違いでもないらしい。

「で、聞きたいことがあるなら早く言ってくれない?」
「今から何するんですか?」
「寝るに決まってんじゃん」

言い放つと、くるりと背を向けた。どうやらより機嫌を損ねてしまったらしい。

「じゃ、さっさとどっか行って」
「愛、とは何でしょうか」

僕と彼女の声が綺麗に重なった。怪訝そうな顔をして振り向く。

「は?」
「この世界には愛が溢れているそうですね。でも、残念ながら僕にはそんなものはどこにも見えません。人によって見える見えないがころころ変わるというのはどうにも気分が悪いものです。あなたになら分かると思いましてね。 『愛』の定義を教えてください」

僕が微笑むと彼女は少しだけ目を細めた。

「沈黙は、愛が存在しないことへの肯定ですか?」

くすり、と彼女が笑った。僕をすっと眺めて、扉に手を掛ける。

「一つ、いいことを教えてあげよう骸くん」

扉を開いて、顔だけをこちらに向けて微笑んだ。






「 『 』 っ て の を 定 義 し た 瞬 間 に こ の 世 界 か ら は 消 え る よ 」

2style.net