自分の耳が信じられなかった。聞き違いでないと分かった瞬間には引き千切りたくなる衝動に駆られた。どうして、なんで、そんなことに。言葉に出来ないくらいの衝撃を受けて、しばらくの間は動けなかった。ふ、と気が付く。あの子は、誰よりも彼を敬愛していた私の幼なじみは、もう知っているのだろうか。知っているに違いない。確信があった。弾かれるままに部屋を飛び出す。足が勝手に動いた。

「、綱吉っ !」

ノックもせずに執務室の扉を勢いよく開ける。どくん、と心臓が波打った。いつもとは空気がまるで違う。背中を汗が伝う。薄暗い部屋の中、綱吉は、見たところはいつものように部屋の真ん中にある荘厳な仕事机に向かっていた。けれど表情が読み取れない。

「綱吉」

私はもう一度、今度は確かめるように名前を呼んだ。それでも、綱吉はぴくりともしなかった。震える体を無理矢理動かして、綱吉に近づく。コツ、コツと私の靴の乾いた音だけが響いた。机の前まで歩み寄ると、やっと綱吉は顔を上げた。しかし私を見てはいない。焦点が違うところにある。

「… 、リボーンが」

どこか虚ろな表情で綱吉が呟く。

「リボーンが…、死んだって」

私は何も言えずに佇んでいた。嘘であってほしい。誰かがボンゴレを混乱させようと流した性質の悪いただの噂であってほしいと、その一心で自分の体を支えていた。本当は、きっと、分かっている。それでもそう願うのは愚かなのだろうか。綱吉はゆっくりと立ち上がって、窓に歩み寄った。

、おれ」
「つなよし、」

私は綱吉に駆け寄った。同時に、思いっきり抱き締められる。あまりの力に息が詰まりそうになった。それでも、振り払うことなんて出来ない。私を抱き締める綱吉の腕が震えている。腕だけでなく、頭も、体も、全部震えていた。落ち着かせようと、そっと綱吉の背中に腕を回したが、私を抱き締める力が増すだけだった。

「何がボスだ…、何が10代目だ…俺は、俺は何も 、なんにも出来なかったのに」
「綱吉… 自分を責めないで」

必死で絞り出した声は涙声だった。溢れてくる。止まらない。彼は私たちの中でこんなにも大きな存在だったのだ。心をひとつ、亡くしたような気がした。私もぎゅっと腕に力を込める。綱吉が、小さく首を振った。

「違う…ちがう、。俺、本当は…」






「わかってたんだ、こうなることが」








奇跡ならいらない



どうかかみさま、この子の優しさを消し去ってあげて、

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